20160127
とても映画になりそうもない貧しい主題を、
猛烈に説明しつくすことで無理矢理ノセていき、
まさかこんなことで興奮する筈はないと余裕で構えた観客に、
細かいジャブのような不意打ちを食らわせつづけ、
ついにはほとんど観客を納得させてしまうのがゼメキスのやり口なのだが、
もうほとんどふざけているとしか思えないような、
それが起きなくても一向に構わないような些末な出来事を、
いかにそれが素晴らしいことかという説明でこれでもかと飾り立て、
器用であればあるほど笑ってしまうようなサスペンスで彩ってみせるので、
ひょっとするとこの男はとんでもないニヒリストなのではないか、
などと勘ぐってしまうのも無理もないことであるのだが、
一番厄介なのはこれがなぜか面白いということであって、
こんなものが面白くあってはならないなどという常識は小気味よく粉砕され、
ああヒッチコックの毒を抜いて器用に吸収できたのは
デ・パルマでもシャブロルでもなく案外この男なのではないか、
などと『ザ・ウォーク』をみてあらぬ事を口走ってみたりもして。