cineぞこない日記

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20160110b

…よそう、そんな固有名詞を呟くのは。

 

酸欠の吐き気はおさまらず、

『マイ・ファニー・レディ』を見てもいっこうに良くならない。

もちろんそれは『忠次旅日記』で受けた呪いなのだから良くなるはずもない。

いやなにも『マイ・ファニー・レディ』が悪いわけではない。

ただ過去の失われた無数の物を思って疲労していた折りに、

「普通の映画」たるべく撮られ、それが叶わぬ願いと知りつつも、

やはり「良質の映画」として観客を集めなければならないということ、

「普通の映画」はもはや成立しないという状態が、

もう20年以上も続いており、

それを嘆く権利すらない世代に自分が属していることに、

重ねがさね疲労をおぼえる。

いや、それはうまく説明されすぎているので、

実際はたんに体調が悪かっただけなのだろう。

総じて表情は良いし、笑ったし、

最後のあの人登場にも場内ただ一人大笑いしたが、

それでもなにか切なく、

そっとホークスをプレイヤーのトレイに載せてしまいそうになる。

 

と、ここで何年かぶりに、

というかふと読みたくなって注文しておいた『映像のカリスマ』の、

主要登場人物の頁を読んで大笑いし、

俄然体調を取り戻した。

 

とはいうものの、いままさに書き上がろうとしている論文を、

破り棄ててしまいたい衝動に駆られ、

といってもそれはデータなのだから破ることはできないわけだが、

ともあれ、それを押しとどめようとして結果として

体調を崩しているとしか思えない。

もはや私個人の意志や欲望とはかけ離れたものになり、

かといってまぎれもなくそれによって私という

個人の意志や欲望が図られることにもなるがゆえに

そう私個人からかけ離れたともいえないその論文と、

いったいどう向き合えばよいのかまったくわからない。

いっそ私にとっても、社会にとっても、

まったく影響を与えないものになってくれたらと願う。

そうなればどんなによいか知れない。

どれほどのことが達成されようと、

何を書こうと、それは同じことだろうと思う。

 

と、思うもやはり書きあがればまずは

ゴダールを見ようそしてこの吐き気を、

いっそ吐くかもしれないしまさか食欲がわくとも思えないが

ともかく『パッション』あたりがいいのではないか、

そしてずぶずぶと呪いの只中に入っていって、

まあこう書いている時点で一種の予防接種なのだが。